Dear Friends

現地法人の社員からロスアンジェルスフィルハーモニーの「Dear Friends」と題する演奏会のチケットを譲ってもらった。ゲーム音楽作曲家・植松伸夫氏が書いた「ファイナルファンタジー」シリーズのゲーム音楽の演奏会だ。聞けば、チケットは発売後3日で売り切れ、e-Bayでかなりの高値がついたとか。

会場は、ロスアンジェルスの中心街にあるウォルト・ディズニー・コンサートホール。昨秋完成したばかりの新しいホールで、ロス・フィルは、本拠地を隣のドロシー・チャンドラー・パヴィリオンからここへ移したそうだ。ベルリンのフィルハルモニー・ザールを銀色に塗り直したような建物で、趣味がいいとは言いがたい。名前からして、内装にミッキーマウスの意匠が溢れているのでは、と恐れたが、客席はオーソドックスなワインヤード形式だった。ロス・フィルは、ジュリーニ指揮の日本公演と、曲目はすっかり忘れたが現代音楽の演奏会を当地で聴いたことがあるので、これが久しぶりの3回目になる。指揮は、ミゲル・ハース・ベドヤ。ロス・フィルをよく振っているようだが、初めて聴く。

開演前、植松伸夫氏が作務衣姿で会場に現れ、席に向かう。聴衆は全員起立し、大歓声で迎える高揚ぶりだ。19:30に演奏会開始。植松氏の音楽をまとめて聴くのは初めてだが、感動した。哀切な調べから毅然とした響きまで幅の広い表現には、人間性に対する暖かい眼差しが底流している。氏の人柄を反映しているのだろう。ゲーム音楽という範疇を超えて、優れた音楽固有の普遍的な力を備えていると感じた。指揮・管弦楽・合唱ともに音楽によく共感し、力演していた。終演後は、やはり全員起立で拍手。アメリカ人はスタンディング・オヴェイションが好きだが、全員起立というのは見たことがない。客席の若い女性が「アリガトウゴザイマシター。」と叫ぶ。日本人として、ちょっと誇らしい気持ちになる夕べだった。